第6回 日本映画の第二黄金期

 占領当初、厳しい検問と企画に対する厳しい指導を行っていたアメリカ軍は1949年10月に検問を止め、1951年に締結されたサンフランシスコ講和条約によって日本は独立します。独立後の日本映画界が最初に行ったことの一つは、それまで禁止されていた広島と長崎の被爆当時の記録フィルムをニュース映画の一部に組み込み公開することでした。それと同時に、敗戦前後に撮影され、占領中上映禁止になっていた時代劇を公開します。また、今井正監督の『ひめゆりの塔』※1や木下恵介監督の『二十四の瞳』※2、市川崑監督の『ビルマの竪琴』※3など、戦争体験の悲壮さや感傷的懐古を目的とした戦争映画も次々に登場しました。

 時同じくして、1951年に「東映」が誕生。東映は、電鉄会社の資本下で終戦後の興行界で躍進していた東横映画と、太泉映画、東京映画配給の3社が合併して発足しました。日本映画界は松竹、東宝、大映、東映、新東宝の大手による量産体制へと向かいます。

 1950年代は、強力な配給網を持つ大手の映画会社にとって、作品を作りさえすれば儲かる黄金時代でした。その理由は当時の日本映画の仕組みにありました。この時代、原則として大手の映画会社は製作と配給と興行を兼ねており、映画を大量に製作し、直営館で興行し、また直営館以外の全国各地の興行会社の経営をする映画館に作品を配給するという仕組みになっていました。また、映画館においては日本映画専門館と外国映画専門館とに分かれていて、日本映画専門館はほぼ完全に大手各社に系列化され、どんなに儲かりそうな作品があっても原則として途中で他社の作品を上映することはとても困難な契約になっていました。それに加えて、大手映画会社が二本立て興行に踏み切ったことで量産化が進み、1945年には845館だった映画館が、翌1946年には1376館、入場者数は7億3000万人。1958年には7067館、11億2700万人と増加を続けました。

 この量産時代は各社の特徴が顕著になった時代でもありました。東映は新時代劇スターの中村錦之助※4東千代之介※5大川橋蔵※6らを生み出し、子供たちを中心に人気を博します。大映は1950年代から1960年代前半にかけて長谷川一夫※7を筆頭に三大女優の京マチ子※8山本富士子※9若尾文子※10、そして市川雷蔵※11と日本映画史に残る大スターを輩出します。また黒澤明監督の『羅生門』※12でのヴェネチア映画祭グランプリを皮切りに、海外進出に意欲をみせ、衣笠貞之介監督※13溝口健二監督※14などによる国際映画祭向けの大作を製作しました。松竹は庶民劇とメロドラマを中心に製作し、1953年〜54年に製作した『君の名は』※15の大ヒットのほか、今井正監督※16木下惠介監督※17小津安二郎監督※18などの明監督による文芸作を発表します。日活は石原裕次郎※19などのスターを生み出し、若年向けの青春映画などを製作・配給。なかでも『太陽の季節』※20『嵐を呼ぶ男』※21などの石原裕次郎主演作が一世を風靡します。東宝は<サラリーマン喜劇>を十八番とし、1956年にスタートした「社長」シリーズ※22は1971年まで続く長期ヒット作となります。また黒澤明監督の『生きる』※23『七人の侍』※24、稲垣浩監督の『宮本武蔵』※25など海外でも評価を得る作品を発表。その他、成瀬巳喜男監督の『浮雲』※26、豊田四郎監督の『夫婦善哉』※27「ゴジラ」シリーズ※28など、幅広いジャンルでヒット作を生み出しました。

 この時代は映画技術の新たな革新も遂げ、映画のカラー化、そしてワイドスクリーンが登場しました。映画のカラー化技術は1930年代後半にアメリカで完成されていましたが、日本は戦時体制に向かっていたこともあり開発が遅れていましたが、1951年にトーキーと同じ松竹が国産カラー第一号『カルメン故郷へ帰る』※29を発表。またテレビとの差別化を狙うシネマスコープなどの大型映画が続々と輸入されました。

 「映画黄金期」にふさわしく、盛岡においても映画館が次々に開館します。昭和25年(1950年)に洋画専門館の中央ホール、昭和29年(1954年)に盛岡映画劇場と盛岡文化映画劇場、昭和30年(1955年)に盛岡日活劇場、昭和31年(1956年)に盛岡東映、昭和33年(1958年)に盛岡松竹映画劇場、昭和34年(1959年)に盛岡東宝映画劇場と盛岡セントラル劇場と、1950年代には多くの映画館が誕生しました。そして、日活、東映、松竹、東宝の直営館が大通界隈の一つの通りに軒を連ねたことをきっかけに、ついに「映画館通り」が誕生します。



=参考文献=
佐藤忠男著「日本映画史増補版2」(岩波書店)
盛内政志著「盛岡映画今昔」(地方公論社)
東宝株式会社発行「東宝75年のあゆみ」
キネマ旬報映画総合研究所編「映画検定 公式テキストブック改訂版」(株式会社キネマ旬報社)

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